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住友ファーマ

2020.10.29

ワンヘルスの観点から抗菌薬適正使用の強化や医療環境の整備に取り組む

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大日本住友製薬は、低中所得国であるベトナムを対象に、2026年まで継続的に薬剤耐性(AMR)対策の活動を実施し、ワンヘルス(ヒト・動物・環境)の観点から抗菌薬適正使用の強化や医療環境の整備に取り組み、9,620万人に裨益する持続可能な感染症治療の実現に貢献します。

2020年10月
大日本住友製薬株式会社



解決を目指す課題 薬剤耐性(AMR; Antimicrobial Resistance)
製品、技術、サービス 感受性サーベイランス研究結果に基づく抗菌薬の適正処方・使用の推進
アプローチ 調査研究、啓発・教育
対象国、地域 ベトナム
達成目標年 2026年
事業規模 7,000万円/年(2019、2021年度の隔年実施)
パートナー 国立国際医療研究センター(NCGM)、現地の行政・医療施設など
SDGs該当ターゲット


3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する。
3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する。



17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。



背景


当社グループは、2017年より、ベトナムをはじめとする東南アジア地域においてカルバペネム系抗生物質製剤であるメロペネムを販売しています。メロペネムは、1995年に当社が自社開発した製剤であり、WHOの必須医薬品モデルリスト(EML)においてWatch Group に分類され、複数の感染症に対する第一選択または第二選択の治療薬として耐性菌の出現を回避すべきことが提唱されています。

東南アジアで最も薬剤耐性の発生率が高いと知られるベトナムでは、地域・病院施設によってメロペネムを含めた種々の抗菌薬が十分な治療効果を発揮できない症例が多く報告されており、当社グループもビジネスを通じてその深刻な状況を認識してきました。

そのような背景のもと、当社は2019年にベトナムの主要な10病院施設と連携し、薬剤感受性サーベイランス研究を開始しました。メロペネムを含めた、現地の重症・難治性感染症治療で主に使用される抗菌薬に対する耐性の発生状況について詳細な調査を行いました。


事業の目的


当社が実施した薬剤感受性サーベイランス研究の結果を根拠とした、抗菌薬の適切な処方・使用および院内感染管理の実現を目的としています。現在は実践的なスキームづくりを行っており、今後、さらに活動スコープをワンヘルスの観点(ヒト・動物・環境)に広げ、継続的に取り組む予定です。


事業の詳細


COVID-19のパンデミックにより世界で多くの人命が奪われ、各国の経済活動が著しく失速したことから明らかなように、感染症は、グローバルヘルスの課題の中でも特に直接的に人命や社会活動の存続を著しく左右する疾患であると言えます。そのうちAMR感染症は、人的・環境的など様々な要因により発生・拡大した薬剤耐性が原因であり、その解決策として、大きく2つの方向性があるとされています。1つは新規抗菌薬の創出、もう1つは既存の抗菌薬の適正使用と院内感染対策によるAMR感染の拡大阻止です。当社は、メロペネムの自社開発および製造販売の長年のノウハウを活かし、その解決策の両方に取り組んでおり、本事業は後者に当たるものです。

当社は、メロペネムの開発過程から、将来的なAMR発生による薬効低下に危機意識を持ち、上市後25年以上にわたり、国内外において抗菌薬の適正使用の推進や感染症発生予防(市中感染・院内感染)を中心とした医療環境整備や市民啓発に努めてきました。研究開発型の製薬企業として、新たな抗菌薬の研究開発のみならず、既存薬も含めた全ての抗菌薬が治療の選択肢として適切な薬効を発揮し続けられる医療環境の整備も、重要な使命であると考えています。

当社が1995年以来に本邦で取り組んできた活動や蓄積データは、現在までに、PK-PDベース(※1)のEBM(エビデンスに基づいた抗菌薬の処方)、院内感染対策サーベイランス(JANIS)をはじめとした公的なAMR対策の礎として実効的に引き継がれ、日本の感染症医療に役立てられています。官民双方による長期的かつ包括的な取り組みなしには解決し得ないAMRの課題に対し、日本が官民連携で確立した現代の諸制度や仕組みは必ずやベトナムにおいても役立つと確信し、本事業に取り組んでいます。先行して着手した感受性サーベイランス研究による科学的エビデンスの創出支援をはじめ、今後、AMRに関わる全てのステークホルダーの行動変容と意識変革、持続可能な官民主体のAMR対策の仕組みづくりなどに対し、他のステークホルダーと協働し、網羅的かつ重層的に取り組んでいきたいと考えています。

2019年度、ベトナムにおけるメロペネムの売上(約20億円)に対し、本事業として約7,000万円を投資しました。今後、ベトナム政府による医療財政改革(ジェネリック製品や国内製品への切り替え強化など)の進展により、メロペネムの売上への影響が推測されますが、本事業においては継続性が不可欠であるとの考えから、少なくとも2021年度は、同規模の投資を維持する方針です。

2019年に始動した感受性サーベイランス研究が礎となり、参加施設における抗菌薬の適正処方や使用の改善が期待されます。さらに、これら対象施設10病院は、ベトナムの医療における教育的役割を担う施設でもあるため、本事業による現地の医療従事者のスキルアップや行動変容・意識改革が、関連する施設に有機的に拡大される波及効果も期待されます。

(※1)PK(Pharmacokinetics)「薬物動態(抗菌薬の血中濃度の推移)」とPD(Pharmacodynamics)「薬力学(抗菌薬の作用)」を組み合わせて、抗菌薬の有効性や安全性を評価し、抗菌薬の最適な投与方法を設計するための考え方


コミットメント達成までの計画(マイルストーン)や活動進捗をモニタリングするKPI


現在、2019年に開始した感受性サーベイランス研究において、主要抗菌薬に対する耐性率の発生状況を分析中です。その結果を踏まえ、地域・施設・感染症種別ごとの耐性率の分析と、打ち手の検討を行い、具体的なKPI(薬剤耐性率の改善目標)を検討する予定です。耐性率実測値の経年変化のほか、取組みに参加した感染症専門の医師・看護師・薬剤師の人数や理解度、連携した民間セクターの業界のシェア率、啓発活動の対象とした一般市民等の人数や理解度など、現地状況に即したKPIを検討していきます。


コミットメント達成に必要な条件


継続的な活動のリソースとなる外部資金、現地に根差した体制整備のための政府省庁との連携、現地で同様にAMR対策の支援に取り組む他の機関・企業との連携、専門人材の確保、支援活動の実施に対する政府の許認可、支援用資材(医療機器など)の現地輸送に係る税関等の協力


各パートナーとの役割分担


・現地政府:MoU、政策への組み込み、省や郡への取り組み拡大
・WHO・JICA:社会実装に向けての助言や連携
・国際NGO/NPO:現地活動に関する情報共有や連携


参考文献、引用文献、関連リンク


・大日本住友製薬ウェブサイト
https://www.ds-pharma.co.jp/csr/global_health/contribution_to_global_health.html
・在ベトナム日本国大使館
https://www.vn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/iryobunya_nichietsukyoryoku.html


企業情報、問い合わせ窓口


企業名: 大日本住友製薬株式会社
担当者: Global Health Officer, 丸山潤美
電話番号: 06-6203-5321(会社代表)

編集:本文および写真は全て大日本住友製薬社より提供