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NEC

2020.10.29

生体認証を活用して、途上国の幼児向けワクチン接種率の向上を目指す

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開発途上国では依然として約2,000万人の子どもが標準的なワクチンすら受けられていない課題があります。NECは、生体認証技術を活用することで予防接種率の向上を目指します。まず2020年に、幼児(1~5歳)指紋認証技術の技術実証をGavi、Simprintsとともに実施します。この技術実証の成功をもって、2021年にワクチン配布を含めた運用実証を実施します。

2020年10月
日本電気株式会社


解決を目指す課題 全ての子どもへ標準的な予防接種を
製品、技術、サービス 生体認証技術、幼児指紋認証技術
アプローチ 技術実証、運用実証
対象国、地域 開発途上国(アフリカ、アジア地域等)
達成目標年 技術実証: 2020年
運用実証: 2021~22年(技術実証成功後)
事業規模
パートナー GAVI, the Vaccine Alliance
Simprints Technology Ltd.
SDGs該当ターゲット


3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 12 件以下 まで減らし、5 歳以下死亡率を少なくとも出生 1,000 件中 25 件以下まで減らすことを目指し、2030 年までに、新生児及び 5 歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。

3.8 すべての人々に対する財政保障、質の高い基礎的なヘルスケア・サービスへのアクセス、および安全で効果的、かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンのアクセス提供を含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。



背景


開発途上国では、今なお2000万人もの子どもが標準的なワクチンすら受けられず、命の危険にさらされています。世界中の子どもが公平にワクチンを接種できるようにしたい。この実現に向けて活動する国際組織の1つが、Gaviワクチンアライアンス(以下 Gavi)です。Gaviの活動は着実な成果を上げつつあります。活動の中心を開発途上国に据えて、設立から現在まで8.22億人の子どもたちに予防接種を行い、1400万人の命を救いました。

こうした成果の一方で課題も残されています。UNICEFによると命を落とす5歳以下の幼児は、依然として年間560万人(※1)を数えるからです。その大きな要因の1つが、途上国に根深く残るIdentity Crisis問題です。途上国全体の子どもの4人に1人は、IDがなく存在すら認識されていません。(※2)各国・地域では、出生登録や母子手帳の整備を進めていますが、その整備がなかなか追い付いていません。アフリカのサハラ砂漠以南の「サブサハラアフリカ」と呼ばれる地域では、5歳未満の子どもの半分は出生届が出されていないといわれています。

正確な本人確認のため、Gaviが採用したのは英Simprints Technology Ltd.(以下、シムプリンツ社)の指紋認証ソリューションです。シムプリンツ社はイギリスのケンブリッジ大学からスピンオフしたスタートアップ企業で、専用のアプリケーションをスマートフォンに組み込み、Bluetoothで接続したスキャナで指紋を照合するソリューションを提供します。スマートフォンさえあればオフラインでも使える仕組みであり、ネット環境が整わない途上国での使い勝手が優れています。

ただし、同ソリューションは大人の指紋は認証できるものの、ワクチンの主な対象となる5歳以下の幼児の認証は精度の点で課題を抱えていました。途上国の過酷な環境でも使える耐久性に優れた指紋スキャナでしたが、幼児の本人確認は親などと紐付けするしか方法がありませんでした。

そこでNECの生体認証の活用をGaviに申し出ることになりました。NECの生体認証は米国政府機関主催のベンチマークテストで高い評価を受けています。正確性とスピードに優れ、指紋認証は過去8回にわたり1位を獲得しています。シムプリンツ社の耐久性に優れた指紋スキャナと使いやすいアプリケーション、そこにNECの世界No.1(※3)の精度を誇る指紋認証技術を組み合わせれば、Gaviの活動を支える大きな力になると考えました。

実際に、2018年12月に実施した小規模の実証ではNECの指紋認証を活用すれば1~5歳の幼児指紋を認証できることが判明し、2019年6月6日Gavi, Simprints, NECの3社でMOUを締結し、幼児指紋の実用化に向け連携を開始しました。

NEC_Fingerprint


事業の目的


幼児指紋認証活用により、本人確認、履歴管理を促進し、ワクチン接種率向上を加速化させることです。


事業の詳細


世界には身分証明書を持たない人が10億人に上るともいわれています。誰もが平等・公平に医療サービスを受けるためには、身分証明書による本人確認が不可欠です。幼児指紋認証が実用化できれば、これまで取り残されていた子どもへ直接本人確認することができ、ワクチンを筆頭に様々な医療サービスを確実に届けることができます。


コミットメント達成までの計画(マイルストーン)や活動進捗をモニタリングするKPI


2020年度にバングラデシュ・タンザニアにて幼児約20,000人を対象に幼児指紋認証の技術実証を実施します。2020年度の実証にて成功した場合、2021年度にはバングラデシュにてワクチン配布に係る運用実証を実施し、幼児指紋認証がワクチン配布に有効であることを実証します。


各パートナーとの役割分担


・GAVI:開発途上国における平等なワクチンの導入・普及と接種率上昇の加速化や、保健システム強化のための支援。技術実証、ワクチン運用実証への支援、現地保健政府とのリレーションの橋渡しを担う。
・Simprints:開発途上国の過酷な環境下でも使えるよう開発した指紋スキャナーとアンドロイド照合ソフトを保有しており、今般そのソフトにNECの幼児指紋認証を組み合わせ、フィールドにて試用。実証現場でのオペレーションを担う。


参考文献、引用文献、関連リンク


※1 Levels and Trends in Child Mortality Report 2017
  https://www.unicef.org/publications/index_101071.html

※2 Birth Registration for Every Child by 2030: Are we on track? P6, December 2019
  https://www.unicef.or.jp/jcu-cms/media-contents/2019/12/Birth-registration-for-every-child-by-2030-brochure.pdf

※3 米国政府機関主催のベンチマークテストの結果


企業情報、問い合わせ窓口


企業名: 日本電気株式会社
担当部署、担当者
  <ビジネス>  グローバル事業推進本部:椿野 沙織、眞塚 麻里江
  <広報・マーケティング>  コーポレートコミュニケーション本部:友永 有三

メールアドレス: press "at" news.jp.nec.com

(メールアドレスの“at”は@に置き換えてください)

編集:本文および写真は全てNEC社より提供