COMMITMENTS

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あおぞら,エレコム,ファミリーヘルス財団

2021.08.23

遠隔学習可能な新生児蘇生法訓練用シミュレータを世界中に普及させ、一人でも多くの新生児の命を救う

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世界で出産当日に亡くなる新生児の4分の1は新生児仮死が原因と言われていますが、適切な新生児蘇生法(Neonatal Resuscitation)を身につけた医療スタッフが対応すれば、その内の約9割を救う事が可能です1) 。しかし、多くの開発途上国ではその導入のノウハウ・リソースがなく、実際のトレーニング実施と普及が困難な状況が続いています。この状況に対し、IoTを活用し【世界中どこからでも遠隔でトレーニングが実施できる新生児蘇生法訓練用シミュレータ】の実現・普及により、教育訓練の機会を増やすことで、新生児蘇生法を習得した医療スタッフを効率よく育成します。その結果として、一人でも多くの新生児の命が救われることを目指します。

2021年8月
エレコム株式会社
認定NPO法人あおぞら
一般財団法人 ファミリーヘルス財団

解決を目指す課題 海外、特に開発途上国における新生児仮死への適切な対応
製品、技術、サービス IoTを活用した医療機器やオーディオ機器開発、スマートフォン・タブレットアプリケーション開発、新生児蘇生法教育訓練のノウハウ・リソース
アプローチ 新生児蘇生法訓練用シミュレータ(模擬聴診デバイス、トレーニングシナリオ設定制御及び模擬バイタル表示用ソフトウェア)開発と、遠隔教育訓練の普及活動により全世界の医療スタッフへの教育訓練を実施
対象国、地域 開発途上国(主にアジア地域)
達成目標年 2024年
事業規模 非公開
パートナー 京都大学、立命館大学、ATR-Promotions、坂本モデル
SDGs該当ターゲット


3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。

3.c 開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国において保健財政、および保健従事者の採用、能力開発・訓練、および定着を大幅に拡大させる。

 

背景


2014年、医師である葉田甲太が、カンボジアの僻地で生後22日目の赤ちゃんを失い泣いていた女性と出会いました。それをきっかけとして、2017年7月に認定NPO法人あおぞらを設立し、小児科医である嶋岡鋼医師の協力を得ながら、赤ちゃんの命を守るべく活動を行ってきました。現在まで、カンボジア僻地への病院建設と新生児蘇生法講習、タンザニアでの5万人の地域住民のための新病院プロジェクト、ラオスでのJICA青年海外協力隊と連動した新生児蘇生法講習会など、精力的に赤ちゃんを救うための活動を展開しましたが、新型コロナウイルス蔓延のため、活動が思う様に進められない状況が続いていました。

一方、エレコムはヘルスケア領域でのプレゼンス向上のため産学共同研究テーマを探索しており、2019年から総務省のMIC 情報通信(ICT政策) 戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE) 社会展開指向型研究開発に採択された「どこからでも学べる遠隔新生児蘇生法講習シミュレータの研究開発」(立命館大学の野間春生教授、京都大学の岩永甲午郎医師を中心とした研究グループ)に参画。IoT機器や医療機器開発のノウハウを活用し、リアルな聴診器型のハードウェア試作とスマートフォン・タブレットアプリ開発を前進させました。試作機を用いたブータン王国での実証実験や、学内での評価では非常によい訓練効果が得られる事も判明しました。SCOPEでの開発プロジェクトは2020年度で終了し、量産機開発への移行を模索するなかCOVID-19パンデミックに世界は覆われてしまい、事業推進も困難を極めていました。

当初、葉田の活動とエレコムの産学連携研究は全く無関係に進んでいましたが、2020年2月に京都大学で実施した共同記者発表の報道をきっかけに、お互いの活動を知ることとなりました。緊急事態宣言等で活動が制約を受ける中でも、Webでのミーティングを重ね認定NPO法人あおぞらも共同でこの事業を推進していくことで関係者の合意を得ることが出来ました。

そして、新型コロナウイルス蔓延下でも、事業を推進し赤ちゃんの命を救うべく、葉田が中心に動き、一般財団法人ファミリーヘルス財団を新たに立ち上げたこと等により、量産機の設計開発及び量産の足掛かりを得ることとなりました。ファミリーヘルス財団が資金面等でのサポート、エレコムがデバイス・ソフトウェア開発、認定NPO法人あおぞらが海外での現地オペレーション協力を担い、関係者が力を合わせてお互いのリソースを持ち寄ることで、研究だけに留まらず、社会実装を推進する道が見えてきました。

それでも、COVID-19パンデミックによる世界的な移動の制限によって、現地でのカウンターパートの探索、普及のための実証実験計画等、困難な課題が山積しております。遠隔で効率的に行うことが出来るこのトレーニングも、導入時には現地での説明や現地協力者の存在は欠かせないため、量産機が完成するまでの間も、国内外でトライアルユーザーやパートナー開拓を行わなければなりません。
この取り組みが一歩でも前進することにより、世界の新生児死亡減少に貢献できればと考えております。


事業の目的


遠隔で効率よく教育訓練可能な新生児蘇生法訓練用シミュレータを世界中に普及させることにより、世界の新生児死亡率を下げる。


事業の詳細


・「どこからでも学べる遠隔新生児蘇生法訓練用シミュレータ」を開発、普及させることで全世界の医療スタッフへ教育訓練の機会を提供します。
・既存のシミュレータと比較し、極めて安価で且つリアリティのあるシステムを提供することにより、高い訓練効果が期待できます。また遠隔でのトレーナーとのコミュニケーション機能をシステムに組み込むことで訓練の質を担保します。
・現地トレーナーを育成するため、誰でも簡単に操作できるシステムを提供することで自律的に訓練の普及を加速させます。

開発途上国での適切な新生児蘇生法の普及が容易になり、結果として世界の新生児死亡率が下がります。

Prototype

訓練の質はコストとトレードオフになりがちですが、本シミュレータを活用すれば、質の高い訓練を同時に多くの場所、人に実施可能なため、極めて効率よく訓練の普及が可能となります。


コミットメント達成までの計画(マイルストーン)や活動進捗をモニタリングするKPI


マイルストーン:
・2021年 量産機設計開発及び試作機を用いた日本国内での実証実験
・2022年 量産及び開発途上国での実証実験(ブータン、ラオス等を予定)
・2023年 開発途上国での講習会実施及びインストラクター養成
・2024年 開発途上国での自律的な普及活動推進
KPI:
・導入件数(医療施設、教育機関等) 
・年間訓練実施回数
・訓練実施延べ人数

<中長期的な目標>
中期的には、赤ちゃんの命を守るための定期的、かつ継続的な講習会を開催し、現地医療スタッフを支援すること、長期的には、現地医療スタッフが自らの手で新生児蘇生法講習会を開催できるようにインストラクターなどの人材育成と、新生児蘇生法講習のシステム構築を目指す。現地医療スタッフが自らの手で新生児蘇生法講習会事業を展開し、自らの手で赤ちゃんの命を守ることができるようになることが最終的な到達目標です。


コミットメント達成に必要な条件


・現地でのカウンターパートとなるパートナー開拓
・導入に掛かる資金の調達
・国ごとに異なるアプリ規制や無線通信、医療関連法規等の許認可への対応
・現地でのインターネット通信環境の確保


各パートナーとの役割分担


・事業主体:一般財団法人ファミリーヘルス財団
・原理構築・研究開発・臨床研究:京都大学、立命館大学
・研究協力・知財提供:ATR-Promotions
・デバイス・ソフトウェア開発:エレコム株式会社
・国内での販売協力:株式会社坂本モデル
・海外での販売・オペレーション協力:認定NPO法人あおぞら


参考文献、引用文献、関連リンク


1) WHO and Maternal and Child Epidemiology Group 2018 Estimates for child causes of death 2000-2016


団体情報、問い合わせ窓口


団体名: 一般財団法人ファミリーヘルス財団
担当者: 理事 段原亮治
メールアドレス: dambara "at" f-health.org

団体名: 認定NPO法人あおぞら
担当者: 理事 大音雄真
メールアドレス: info "at" npoaozora.org

団体名: エレコム株式会社
担当者: 商品開発部 ヘルスケア&ペリフェラル課 メディカルチーム、岩本修
メールアドレス: press "at" elecom.co.jp (広報窓口)

メールアドレスの“at”は@に置き換えてください

編集:本文および写真は全てエレコム社、ファミリーヘルス財団、あおぞらより提供